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古典芸能入門

歌舞伎、文楽、落語に能、クラシックコンサートといわれると、なんだか敷居が高いと思っている方もいるでしょう。 でも歌舞伎にしても文楽にしても昔は庶民の娯楽でした。芸が芸能になり芸術になってしまうともはや文化の領域で自分とは関係ない世界のものと思ってしまったら人生の楽しみは半減します。 このコラムは観客歴40年以上という篠原安心院(しのはらあじむ)さんが、独自の視点で作品を楽しむポイントや役者の話、作品の背景からチケットの買い方、劇場の席を選ぶ方法などがわかる古典芸能をすんなり楽しむためのポイントを優しく親切に教えてくれるコラムです。 安心院さんの厳しくかつ軽妙な文章を読めば、いつしかあなたも古典芸能通になれます。お楽しみに!

Vol.185  文楽  「 壷坂観音霊験記 (壷坂) 《一》 」

2011年4月10日(日)

 東日本地震のあまりの被害に驚いた事と、計画停電だの都市交通の混乱等がありまして、暫くお休みを致しました。国立劇場も、3月中は全ての自主公演を取り止めて居りましたが、今月から再開致しましたし、暖かくなりその為電力消費の需要も落ち着いたと言うのでしょう、電車や地下鉄もほぼ通常通りになりましたので、このコラムも徐々に復活致そうかと存じます。今後共、どうぞ宜しくお願い致します。

 

 本日取り上げるのは、前回取り上げました良弁杉の双子の兄弟の様な作品です。明治初期の廃仏毀釈運動の結果、このまま廃れてしまうのかと思われた仏教が、種々な形で復活運動を展開させたらしいのです。その一環として、文楽の世界にも、観音様のご利益を判り易く語る新作の連作が出来た様です。良弁杉もそうですが、今回の壷坂もそんな一巻なのです。そして、この二作は、名人の二代目団平が曲付けを行い、それに先立って彼の奥方の千賀女が大幅に筆を入れた経緯も同じで、ですからこのご夫婦合作の双子の兄弟なのです。先ずは、粗筋から紹介致しましょう。

 

・        「土佐町松原の段」。今日は壷坂寺の縁日。人々が集まってお寺の霊験のあらたかさに付いて話をして居る所へ、沢市の女房お里が通り掛かります。皆が、お里が大変に優しく沢市に仕えるのを褒めますと、お里は「あの目を何とか見える様にしてあげたい」と真情を吐露しまして、皆ほろりとする丈の、序の口の段です。

 

・        「沢市内の段」。沢市は目が見えないのですが、実直に三味線や琴の稽古を付ける事で細々と暮らして居ます。お里も一所懸命賃仕事で助けて居ます。お里が外から帰ると、沢市は三味線を弾いています。「あら、ご機嫌の良い事」「そうじゃないちと話がある」ここから二人の会話が始まります。「前から聞こうと思って居たのだが、お前は毎朝4時前にそっと家を抜け出して、暫く留守にするが、どこぞに良い男でも出来たか、そんなら言って呉れれば、俺は身を引くよ」。これにお里が激しく反応します。「そりゃ胴欲な沢市さん、三つ違いの兄さんと・ ・ ・ 」。名高いお里のクドキの場面です。私は毎朝壷坂様にあんたの目が良くなるようにとお参りをしていました、それを他に男とは、と言った内容です。これには沢市も一言も無く謝ります、と共に一緒にお参りしようと言うお里の誘いに乗るのでした。

 

・        「山の段」。二人は壷坂寺に行きます。途中目の不自由な沢市を何くれと無く気を遣うお里がいじらしいばかりです。山の上にあるお堂で二人して一心に祈りますが、何も起きません。沢市は「これから三日ここにお篭りしてお願いする」と言い出し、では必要な物を取ってくるからねと、お里は一旦家に引き返します。沢市は、「これだけお願いしても駄目なのだから、駄目なのだろう。ならいっそ居ない方がお里の為だ」とばかり、絶望して、谷底に身を投げます。帰って来たお里はこれを見つけ「何で、一人で行くの」と、激情に突き動かされてこちらも身を投げます。そこへ観音様が現れて、二人の真情とお互いの愛情を愛でて、二人を生き返らせ沢市の目も治して呉れます。喜んだ二人が、朝日の中で万歳をする処で幕となります。

 

 考えて見れば、他愛の無いお伽話ですが、文句なしの目出度い終り方もあって、見終わって極めて気分が良くなる出し物となって居ります。さて、この狂言の見所・聞き所は、次回に続けます。



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この投稿は 2011 年 4 月 10 日 日曜日 8:49 PM に 未分類 カテゴリーに公開されました。 この投稿へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 コメントを残すか、ご自分のサイトからトラックバックすることができます。

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