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古典芸能入門

歌舞伎、文楽、落語に能、クラシックコンサートといわれると、なんだか敷居が高いと思っている方もいるでしょう。 でも歌舞伎にしても文楽にしても昔は庶民の娯楽でした。芸が芸能になり芸術になってしまうともはや文化の領域で自分とは関係ない世界のものと思ってしまったら人生の楽しみは半減します。 このコラムは観客歴40年以上という篠原安心院(しのはらあじむ)さんが、独自の視点で作品を楽しむポイントや役者の話、作品の背景からチケットの買い方、劇場の席を選ぶ方法などがわかる古典芸能をすんなり楽しむためのポイントを優しく親切に教えてくれるコラムです。 安心院さんの厳しくかつ軽妙な文章を読めば、いつしかあなたも古典芸能通になれます。お楽しみに!

Vol.159 文楽  「 物語と口説(くどき) 」

2010年5月17日(月)

 

 “かたり”とは本来、物事や事件を伝える事、出来事を詳しく述べて相手にその全部を聞かせると言うのが、元々の意味です。これがかなり転化して、無い事をさも有りそうに話して騙す事を“騙り”と言う様になりましたけど。さて浄瑠璃自体、太夫は歌うとは言わずに語ると言います。つまり浄瑠璃が語り物である訳です。そしてその盛り上がりの場面で、またまた「物語」が出て来ます。この物語の場面は、話が大きく進む事もあり又ひっくり返る時もありで、聞いて居て気の抜けない場面となりますし、ある時は複雑な三味線が付いたり又ある時はツケ入りの大見得に繋がったりと多くの工夫が施されて居りますので、見ていても面白い場面となって居るのが通例です。「いざ物語らんと、座を構え」等と物語の始まりを教えて呉れるのが多い様です。

 

 立役(男性の登場人物)の物語の場面を幾つか思い出して見まししょう。「源平布引滝」の実盛は、白旗を持って泳ぎ寄った小まんの片腕を斬り落とした顛末をそのまま物語ります、一方「嫩軍記」の直実は、自分の息子を身替りに立てたのを隠して、恰も敦盛を討ったが如くに藤の方と相模相手に物語ります。随分物語の内容と語る人物との関係が違うものなのです。一方、「忠臣蔵6段目」の勘平は、切腹をして手負いになってから言い訳を物語ります。同じ様に、「すし屋」の権太も手負いになってから苦しい息の中で経緯を語ります。それまで悪者だと思って居た人物が実は良い人であったと判るのを“もどり”と呼びますが、この権太のもどりは典型的に物語の形で明らかにされるのです。「千本桜」の狐忠信は、本物の佐藤忠信が出てきて仕舞うので居所が無くなり森へ帰りますが、生い立ちや鼓との因縁を狐言葉で語ります。これも物語の一種と言えるでしょう。

 

 女形の物語は、口説(くどき)と呼ばれます。殆ど例外無く良い曲が付いており三味線と相俟って聞かせ処となって居ますし、特にこの場合を「サワリ」と呼ぶ事も有ります。「堀川」のお俊は“そりゃ聞えませぬ伝兵衛さん”に始まる人気の口説がありますし、「天網島」の女房おさんは“あんまりじゃぞえ治兵衛さん”と思いのあり丈を語りますが、この両方とも恋人や夫と膝詰めで、語り掛けて行きます。「酒屋」のお園は、少し違い“今頃は半七さん、どこにどうしてござろうぞ”と、行灯に寄り添いながら一人で淋しく“くどき”を続けます。「合邦」の玉手御前は、これも手負いになってから長い口説が始まり、先の“もどり”の真情を吐露するに至ります。親父がこれを「オイ・ヤイ・オイ・ヤイ」と受けるのも印象的です。「帯屋」のお絹は、人前では夫の不行跡をかばいますが、二人になると、“私も女子の端じゃもの、大事の男を人の花、腹も立つし、悋気の仕様もまんざら知らぬではないけれど”と、女房の真情を吐いて迫ります。こうなるときっちりとした自我を持った近代女性に見えて来ますね。

 

 語りものである浄瑠璃の、そのクライマックスを形成する「物語」や「口説」、多分必ず重要な場面で出て来ます。床本を読んで予習をしながら、どこがそうかなと思ったり、有名なサワリが出てくれば、前後の関係等を頭に入れて実演での、出会いを楽しみにするのです。



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この投稿は 2010 年 5 月 17 日 月曜日 9:19 AM に 未分類 カテゴリーに公開されました。 この投稿へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 コメントを残すか、ご自分のサイトからトラックバックすることができます。

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